雨の品川駅
雨の品川駅につく。中野何某の詩の一編の持つ叙情を好む。異なる感傷に浸るが多くの時すでに過ぎ遺憾。捨てがたい感性に支えられる日々の暮らしを思う。我が情景は低級なる映画の如きものか。雨の品川駅を俯瞰する位置は不可思議なれど譲れず。若い二人はプラットホームに立ち無言のままそれぞれの電車に乗って別れる。理由は如何。各々抱えるもの二人を結ぶことを阻む。進む道の違いか。折り合いはつかず。自らを殺すことはできず。女雨に濡れたレインコート。音楽必要なれども不可。物語にあらずや。美しく雨の強さは強からず弱からず。電車が入り込む。一人が乗り込み一人が残る。切ない恋愛感情がこみ上げてくるか。
雨のプラットホウムに傘の花咲く
六月の品川駅の人混みに
午後の物語とは雨の六月
薄緑色の電車が懐かしき時を止める。すでに東京を離れた男は我が子をだきあやす。女は夫の経済に紛争する。人の出会いは互いの抱えているものが機会を得て折り合わなければ重ならず。
弁当の中身に見入る昼の鐘
庭に咲く雑草の花に朝の露
儚き夢は読んで字の如し哉
二〇二〇年二月十五日 豊明 玄宗庵にて
子平
縦書き
http://haibun.gardening.co.jp/wp-content/uploads/2020/02/雨の品川駅.pdf