コロナウイルス
ぼくが一生懸命にコロナの話をテレビで専門家の話を聞いているのに台所の方でそんなことはおかまいなしに掃除機をかける妻がいる。どちらが正しいかわからない。ここが重要でここが聞きたいのに聞き逃してしまった。ぼくは途中まで耳をこらしてなんとか聞き逃さないようにしようと頑張ったが結局どんどん大きな音が僕をはばんだ。とうとう僕はあきらめた。今日の今の掃除のローテーションは妻の仕事で僕の聞き耳は高尚な政治の話でとてつもなく難しいことなのだ。でも目の前のゴミを掃除機で吸い取ってしまわなければ毎日スッキリした気分の良い暮らしができないのも確かなことなのだ。テレビをみていた小さな娘はお母さんお母さんと聞いてくる。ぼくは遠くの山を見る。
枕にも三時五分の闇の中
コロナ禍は世界の終わりお母さん
山を見て今年も畑を耕せり
二〇二〇年三月二十八日
子平
<縦書き>
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