梅の寺へ

Updated on 2020年2月23日 in 人間関係
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梅の寺へ

 

 

未だ訪れぬ梅の花の季節に京都北野天満宮に向かう。あわ餅に体休め北野白梅町に戻る。嵐電にて大宮に阪急より四条へ向かう。南座は二度目なり。初めて見た福助の藤娘に美しき歌舞伎というもの見る。男役者というものの意味を得心。女にはできぬものか。その気品今も忘れぬこと。友を伴い菊の井の酒に歌舞伎とは贅沢な思い出もあり。並べ立て数整えてみることも優楽しみ。雪降れば龍安寺の景色を求め季節の喜びを追い紅葉の祇王寺とかいう廃屋にも何かもとめ遠い昔の人の影を追ってみる時もあり嬉。梅の蕾は未だ硬い。都をどりは艶やかに多数の芸妓派手やかに。建仁寺というところには龍が居り客迎え襟ただすとか。娘すでにこの街に二十年住まうことに託けて通いすでに記憶なし。幕末と新しき国に関わりある町とは何ぞ。ただ歩き回るのみか。梅の蕾は未だ硬い。死んでいった人の暮らしや殺された人の魂が徘徊する昔話に嬉ぶ。蘇る死んだ死人の魂が町々に闊歩して賑やかなりとか。離れ難き幻想。

 

 

何事もなき世おもしろくとは誰

したり顔先斗町にも論語あり

 

いつ咲くか昨日も今日も梅の寺

 

 

二〇二〇年二月十六日 玄宗庵にて

子平

 

 

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