春の夜のピアノ曲

Updated on 2020年4月11日 in 人間関係
0 on 2020年4月11日

春の夜のピアノ曲

 

春の夜にピアノ曲を聞いている。誰が弾くのか。音はあたたかな風に乗りあたりに広がる。彼は齢七〇にして心があるのか。迷い未だあり。友と酒を飲み懐かしき想いに募る。春夜洛城に笛を聞くとはこのことか。真空の空気は、闇の中に留まり、音だけが風に乗ってあたりに満ちる。頭の中は空白でなお透明。女若くして堕落を楽しみ、男酒に溺れまた楽しむ。共に暫し会うのか。次に何を求める。ひとり公園の椅子は朽ちる。美しき星は雲に隠れ何をか言わんとするが果たせず。

 

如月の今宵の女闇の中

蒲焼も興醒めてなお月の中

 

足元の北極星も腹の中

 

 

二〇二〇年二月二十七日 玄宗庵にて

二〇二〇年四月十一日 改稿

子平

 

 

<縦書き>

https://haibun.gardening.co.jp/wp-content/uploads/2020/04/春の夜のピアノ曲.pdf

 
  • Liked by
Reply