春の夜のピアノ曲
春の夜にピアノ曲を聞く。誰か弾く。音あたたかな風に乗りあたりに広がる。彼は齢七〇にして心あるか。迷い未だあり。友と酒を飲み懐かしき想い募る。春夜洛城に笛を聞くとはこのことか。真空の空気は、闇の中に留まり、音だけが風に乗ってあたりに満ちる。頭の中は空白でなお透明。女若くして堕落を楽しみ、男酒に溺れまた楽しむ。共に暫し会うか。次に何を求める。ひとり公園の椅子は朽ちる。ただ美しき星は雲に隠れ何をか言わんとするが果たせず。
如月の今宵の女闇の中
蒲焼も興醒めてなを腹の虫
足元の北極星の腹の中
二〇二〇年二月二十七日 玄宗庵にて
子平
<縦書き>
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